2012年2月27日月曜日

放射線源を手に入れろ!マントル(トリウム)編


ガイガーカウンターなどの放射線測定器を手に入れると、次に欲しくなるのは「放射線源(以下、線源)」だ。

線源」とは放射線がビビビと出ているモノのことで、それを持っていれば、例えば放射線測定器が壊れていないか確かめたり、他の放射線測定器と鳴き合わせして校正したり、怖がる人に「ほら、ほら」とみせびらかしてキャーキャー言わすことができる。

僕が今回「線源」として入手したのはamazonで見つけた「キャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG) マントル L 3枚組 M-7909」という代物。実際にはCAPTAIN STAGという会社のガスランタンにつかうモノのようだが、どういうわけだかご丁寧にも「商品の説明」には下記のように記されている。
「――微量のトリウムを含有しており、放射線源としても利用できます。放射線測定器の簡易テスト線源として最適です」
…かなり本末転倒な説明だ(笑)


■「マントル」とは何か?

実は幼い頃ボーイスカウトにいた経験もあるのだが、それ以後アウトドアの経験は少なく(だいたい想像がつくと思うが…)、もちろんランタンなど所有していない。なので「マントル」と言われても何に使うものなのか知らなかった。

軽く調べてみると、どうやらそれはランタンを発光させる、電球でいえばフイラメントの役割を担うものであるらしいことがわかった(参考:マントルてなんじゃ?)。

また我々の目的である、そこに含まれる微量の放射性物質「トリウム」は、α線の電離作用でランタンの炎を安定させる目的で使われるのだそうだ(参考:wikipedia)。


■放射性物質「トリウム」とは何か?

基本的なことはwikipediaでも読んでもらうことにして、線源としての情報として必要なのは、それが何(放射線の種類)を放射しているかということ。調べてみると、「多くのα線」と「微量のβ線とγ線」を放射するらしいことがわかった。

トリウムは地球上に豊富に存在するので、これまで様々な形で利用されてきた。その中には健康飲料水(Radithor歯磨き粉(Doramadなんて物騒な代物もあって愛用者に重大な健康被害をもたらしていたりする(もちろん現在は無い)。マントルにこのトリウムが使われていたのも、その頃から続く名残りであるのと同時に、他のモノでも代用可能だったが安いからというのが理由らしい(参考:「世界で一番美しい元素図鑑」)。


トリウムが使われた放射性歯磨き粉「Doramad」(ドイツ製品)

ラジウムとトリウムが相当量含まれた放射性健康飲料「Radithor」

また古いカメラのレンズに「アトムレンズ」または「トリウムレンズ」と呼ばれているものがあり、それはトリウムをまぜたガラスが使われたレンズで日本では1970年代まで製造されていた。こちらのページでは線量が高かった「Super-Takumar 1:1.4/50mm」のレンズ後面で「毎時7マイクロシーベルト」近くのγ線が計測されていることが記されている(参考:「アトムレンズ(トリウムレンズ)(放射能レンズ)」「放射能レンズ」)。

ちなみにトリウムは、かつて原子炉に使うために数十億ドルを懸けた研究が行われていたという歴史があり、それは頓挫して現在に至るらしいのだが、こんな本「平和のエネルギー―トリウム原子力 ガンダムは“トリウム”の夢を見るか?」が、、、ガンダム?な、なんだろこれ?


■「β線+γ線」の恐怖

前置きが長くなったが、まず単純に上に置いて測ってみた。すると写真のように「毎時1.5マイクロシーベルト」くらい。「DANGEROUS RADIATION BACKGROUND」と表示して、まあソコソコである。。。が、ほんとうはもう少し出るかなと思っていたので、ほんの少しだけガッカリだったりした。

前項で話したようにトリウムからは「多くのα線」と「微量のβ線とγ線」が放射されている。「α線」は薄い紙を通り抜けることもできない弱いエネルギーの放射線なので、マントルを覆う透明なプラスチックで遮蔽されているだろう――というか、そもそもこのガイガーカウンターは「β線とγ線」」しか拾わないので計測されない。そしてアルミで遮蔽しているので「β線」も計測されておらず、つまりこの数値は「γ線」だけを計測したものとなる。

ならばと次にアルミで遮蔽を外して「β線+γ線」で測定してみる。る。る。る。と「毎時14マイクロシーベルト」という見たことのない数値に!

ちょっとドキドキ(うわー10マイクロ超えると表示形式変わるんだー)

――でも調べてみると、『β+γ線 ガイガーカウンターでのβ線測定時の誤った表示について』というページを見つけた。この見解が「毎時14マイクロシーベルト」を説明するのに妥当だろう。

構造上、γ線よりβ線を多く捉えてしまうガイガーカウンターでは、同じエネルギーのβ線とγ線が1000個ずつ放射されている線源を近接距離で測定した場合、以下のように実際よりも10倍以上の結果になってしまうというのだ。

β線200個カウント(計数率20%)
γ線10個カウント(計数率1%)
画面表示0.1μSv/h×210=21μSv/h

なるほど。これまでアルミ遮蔽すると「β線」を拾わなくなるとだけ理解していたのだが、実際は「β線+γ線」で計測することによって本来の線量より異常に高い線量を出力してしまうんだな。やはり「β線+γ線」で拾ってしまうガイガーカウンターはアルミ遮蔽が必要そうである。

線源ひとつあるだけでイロイロ勉強になる。

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